PULPUL(プルプル) 買い付けレポート
今年も、この季節がやってきました。
2025年08月、岩下珈琲は、愛するインドネシアの大地へ、年に一度の買い付けの旅に出ました。
数あるインドネシアの産地の中でも、「聖地」と呼び、毎年欠かさず巡礼に向かう特別な場所があります。
それが、スラウェシ島トラジャ地方。そして今回の目的はその奥地にある、PULPUL(プルプル)村です。
「ダイレクトトレード」という言葉は、今やありふれたものになりました。しかし、私にとってそれは「直接取引」という事務的な言葉ではありません。
それは、私たちが愛するコーヒーを育んでくれる人々に「会いに行く」こと。彼らと同じ空気を吸い、同じ道を歩き、彼らの手と、そして彼らの「家族」に再会する、「巡礼」に他なりません。
なぜ、私たちはプルプルを目指すのか。
プルプルは、単なるコーヒー産地ではありません。そこは、私たちがスペシャルティコーヒーに求める「すべて」が凝縮された、奇跡のような場所です。
まず、その「標高」。プルプルの農園は、標高1,900メートルから2,100メートルという、トラジャ地方で最も高所に位置します。
「天空の産地」と呼ばれるこの場所への道は、想像を絶する厳しさです。舗装された道はなく、雨季には水牛でさえ進むのが困難なほどのぬかるみとなります。
しかし、この「アクセスの悪さ」こそが、プルプルのコーヒーを特別なものにしています。
この極端な高標高がもたらす昼夜の激しい寒暖差 が、コーヒーチェリーをゆっくりと熟させ、糖度と良質な酸を実の中に凝縮させます。
その味を求めてトラジャに向かいます。
スラウェシ島、トラジャの地へ

日本を出発し、シンガポール経由でジャカルタへ約8時間。さらに車でスラウェシ島へ移動し、山道をおよそ10時間かけてトラジャ地区へ。そこからは未舗装の道や、先人たちの築いた細い橋をバイクで数時間、時には、がやっと歩けるだけの急勾配。ぬかるんだ赤土にタイヤが空転しバイクで登れない道もあり、歩いて進みます。苦労の末ようやく高地・トラジャのプルプル村にたどり着きます。空気が変わり、湿度が変わり、そしてあの独特の土と緑の匂いが「産地に来た」と告げます。
これが、岩下珈琲の「買い付け」です。
快適なオフィスでサンプルを待つのではなく、自ら泥に足をつけ、生産者と同じ道を行く。この「当事者性」こそが、私たちの品質の源泉だと信じています。
念願の再会。

継続的な関係性をとても大切にしています。
町を出て、バイクで3時間。ついに、生産者の家へ到着しました。
「今年で3回目。家族の皆さんと再会です。」
岩下珈琲の強みは、この血縁ならぬコーヒー縁とでも言うべき、強固な絆にあります。「今年2回目」という事実は、私たちが一回限りの買い付けではなく、継続的な関係性をどれほど大切にしているかの証明です。この関係性こそが、品質のブレを防ぎ、彼らの生活を支え、ひいては岩下珈琲の味を守る「防波堤」となっています。
これが「プルプル」だ!

「今年の出来」を見せてもらうために、裏手へと回ります。そして、目の前に差し出された麻袋。
その中身を見た瞬間、私は息を呑みました。ルビーのように輝く、完熟したコーヒーチェリー。私の手が、その「宝物」に触れます。
思わず、心の叫びが漏れました。 「これが《プルプル》だ!」 「私は、これを購入するために1万数千キロの旅をしてきた!」
私があえて「《プルプル》」と呼んでいるのには理由があります。「プルプル」は、もはや単なる地名ではありません。それは、このプルプル村という土地と、この「家族」の汗と、そして私たちが越えてきたあの過酷な旅路の、すべてが「結晶」した私と彼らの「合言葉」であり、最大の敬意を込めた「ブランド名」なのです。
文字通り手間暇をかけてコーヒー豆が出来上がります。

収穫したコーヒー豆をパルパーと言う簡易機械で皮を除去しています。大変な重労働です。この機械で約5トンもの豆を剥いています。モーターが付いていればどんなに楽なことか。
皮を剥いた豆は、パーチメントと呼ばれます。これから豆のぬめりを取るため水洗いを行います。それから天日乾燥が続きます。そして脱穀。気の遠くなるような作業です。
この作業を家族総出で手作業で行っています。こうしてできるコーヒー豆です。本当に1粒ひと粒大切に味わっていただきたいのには、こういう理由があるのです。
そして、今年は600kgの購入に至りました。
この日誌は、私たちの長い旅の中の、たった数日に過ぎません。
しかし、この1万数千キロの旅路の先で苦労して手に入れたコーヒー豆が、最高の「一杯」となり、まっすぐにあなたの元へつながっています。
この天空の産地から私たちが持ち帰った最高の収穫を、どうぞお楽しみください。
コーヒー豆の特徴 / Features
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浅煎り
- ・甘 味
- ・苦 味
- ・酸 味
- ・コ ク
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中煎り
- ・甘 味
- ・苦 味
- ・酸 味
- ・コ ク
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深煎り
- ・甘 味
- ・苦 味
- ・酸 味
- ・コ ク
コーヒー豆の産地 / Producing Area
未だ、文明も乏しい秘境の標高1800mm付近で栽培され、最高な豆を生み出します。













