ジャコウネコのルワックコーヒーについて
ジャコウネコのコーヒーを求め、 オーナー自ら 現地買付けしています。
世界最高峰のルワックコーヒーは、 野生のジャコウネコ、 特にスマトラ島アチェ州の森に生息する ビントロングの糞から採れる 極めて希少な逸品です。 その年間収穫量はごくわずか。
岩下珈琲は、 この奇跡の味と物語を確かな品質でお届けするため、 オーナー自らが現地へ赴き、直接買い付けを行っています。
伝説の珈琲「コピ・ルアク」 —その起源と奇跡の物語—
世界で最も特別なコーヒー
岩下珈琲オリジナル袋
コピ・ルアク(Kopi Luwak)は、世界で最も高価で、伝説的なコーヒーとしてその名を知られています。その名は、しばしば「ジャコウネコ コーヒー」と言われ、多くのコーヒー愛好家や美食家の好奇心を掻き立ててきました。
岩下珈琲はスマトラ島アチェ州のタケンゴンの農場で収穫された自然の「ルワック・コーヒー豆」を現地人を介して仕入れています。ここでの年間収穫量は約150kg程度のため非常に貴重な豆です。インドネシアの地元の呼び名である「ルワックコーヒー」という名前で販売しています。
このコーヒーの最大の特徴は、その比類なき生産方法にあります。アジアに生息するジャコウネコ(Asian Palm Civet)が完熟したコーヒーチェリーを食べ、その体内で部分的に消化された後、糞として排出されたコーヒー豆から作られるのです。
コピ・ルアクの始まりは偶然の発見。植民地時代のインドネシアにおける起源。
19世紀、現地のインドネシア人農家は、コーヒーを自らのために飲めませんでした。
コピ・ルアクの起源は、19世紀のインドネシアにおけるコーヒー生産の歴史と密接に結びついています。当時、インドネシアはオランダの植民地であり、ジャワ島やスマトラ島には広大なコーヒー農園が設立されました。
1830年頃に施行された「強制栽培制度(Cultuurstelsel)」の下で、現地のインドネシア人農家は、オランダ人が所有する農園で栽培されたコーヒーを自らのために収穫することを固く禁じられていました。
飲んだ人はだれもが「このコーヒーは何だろう?」とつぶやくほど味はまろやかです。
生活の糧を絶たれた農家たちは、創意工夫と鋭い観察眼によって、ある驚くべき事実を発見します。農園周辺の森に生息する野生のジャコウネコ(現地では「ルアク」と呼ばれる)が、最も熟した真っ赤なコーヒーチェリーを選んで食べ、その種子であるコーヒー豆を未消化のまま糞として排出していることを見つけたのです。
彼らはこの糞を拾い集め、豆を丁寧に取り出して洗浄し、焙煎して飲んでみました。すると、驚くべきことに、そのコーヒーは農園で収穫されるどのコーヒーよりも滑らかで、香り高く、格段に優れた味わいだったのです。
この物語は、コピ・ルアクの起源が単なる珍品ではなく、抑圧された人々の知恵と自然との共生から生まれた産物であることを示しています。この歴史的背景こそが、コピ・ルアクが本来「天然」であり「野生」のものであることの揺るぎない証拠となります。
それは人間によって発明されたのではなく、自然界の営みの中で「発見」されたものであり、この本来の姿から逸脱した現代の工業的な生産方法とは一線を画すものです。
自然界の「バリスタ」。スマトラ島アチェ州のジャコウネコ
コピ・ルアクを生み出す主役は、一般的に「ジャコウネコ」と総称される動物たちですが、その種類は一様ではありません。
特に岩下珈琲が豆を仕入れるスマトラ島アチェ州の豊かな森林には、主に2種類のジャコウネコ科の動物が生息しています。それは、ビントロングとマレージャコウネコです。
しかし、現地の農園主から得られた情報によると、この2種類の動物のコーヒーチェリーに対する関わり方には、決定的な違いがあるという話を聞きました。
ジャコウネコは、赤く熟した豆しか食べないと言われています。
ジャコウネコの腸内菌と体温の作用で発酵されます。
マレージャコウネコ( Malay Civet / 学名: Paradoxurus hermaphroditus )
スマトラ島アチェ州に生息するもう一種類の重要なジャコウネコ
スマトラ島アチェ州に生息するもう一種類の重要なジャコウネコが、マレージャコウネコです 。一般的に「コモンパームシベット」や「アジアンパームシベット」としても知られるこの動物は、インドから中国南部、東南アジアにかけて広く分布しています 。彼らの食性も雑食ですが、特に果物を好む「果食性」であり、鋭い嗅覚で最も熟した甘い果実を選び出す能力に長けています。
ビントロング( Binturong / 学名: Arctictis binturong )
絶滅危惧種に分類されている、ジャコウネコのピントロング
別名「クマネコ」や「クマジャコウネコ」とも呼ばれるビントロングは、その名の通りクマを思わせる風貌を持つジャコウネコ科の動物です。
インドからタイ、マレー半島、インドネシア辺りにかけての深い森林に生息し、スマトラ島もその重要な生息地の一つです。食性は雑食で、果実を好んで食べます。
現地農園主の話によれば、アチェ州の農園周辺のさらに森の奥深くに、ビントロングが生息しており、コーヒーチェリーを丸ごと飲み込んで排出された糞が多く見つかるそうです。
しかし、ビントロングはIUCNのレッドリストで絶滅危惧種(VU - 危急種)に分類されており、その存在自体が非常に貴重であり、出荷数も限られています。
岩下珈琲は、このビントロングが生息している地域の農園にこだわり、直接買い付けを行なっています。訪問するだけでも大変なジャングルの奥地にその農園はあります。私がその地域にこだわるのは、マレージャコウネコの生息地にこだわるからなのです。
スマトラ島アチェ州に生息するもう一種類の重要なジャコウネコ
マレージャコウネコ(Malay Civet / 学名: Paradoxurus hermaphroditus)
スマトラ島アチェ州に生息するもう一種類の重要なジャコウネコが、マレージャコウネコです。一般的に「コモンパームシベット」や「アジアンパームシベット」としても知られるこの動物は、インドから中国南部、東南アジアにかけて広く分布しています。彼らの食性も雑食ですが、特に果物を好む「果食性」であり、鋭い嗅覚で最も熟した甘い果実を選び出す能力に長けています。
絶滅危惧種に分類されている、ジャコウネコ
ビントロング(Binturong / 学名: Arctictis binturong)
別名「クマネコ」や「クマジャコウネコ」とも呼ばれるビントロングは、その名の通りクマを思わせる風貌を持つジャコウネコ科の動物です。
インドからタイ、マレー半島、インドネシア辺りにかけての深い森林に生息し、スマトラ島もその重要な生息地の一つです。食性は雑食で、果実を好んで食べます 。現地農園主の話によれば、アチェ州の農園周辺のさらに森の奥深くに、ビントロングが生息しており、コーヒーチェリーを丸ごと飲み込んで排出された糞が多く見つかるそうです。
しかし、ビントロングはIUCNのレッドリストで絶滅危惧種(VU - 危急種)に分類されており、その存在自体が非常に貴重であり、出荷数も限られています。
岩下珈琲は、このビントロングが生息している地域の農園にこだわり、直接買い付けを行なっています。訪問するだけでも大変なジャングルの奥地にその農園はあります。私がその地域にこだわるのは、マレージャコウネコの生息地にこだわるからなのです。
スマトラ島アチェ州について
岩下珈琲はこの農園で収穫された自然の「ルワック・コーヒー豆」を現地人を介して仕入れています。ここでの年間収穫量は約150kg程度のため非常に貴重な豆です。岩下珈琲は、皆様に生産者が判っている豆だけをお届けしています。
ジャコウネコが産んだ奇跡の製法。
コピ・ルアクのユニークな風味は、単なる偶然や神秘の産物ではありません。それは、ジャコウネコの行動と生理機能が織りなす、科学的根拠に基づいた二段階の精製プロセスの結果です。
ジャコウネコがもたらす二重の品質管理
真のコピ・ルアクが生まれるプロセスは、二つの重要な自然のメカニズムによって成り立っています。
第一のメカニズムは「選択」です。野生のジャコウネコは、熟練したコーヒーピッカーのように振る舞います。彼らは鋭い嗅覚を頼りに、数あるコーヒーチェリーの中から、完璧に熟し、傷ひとつない最高品質の実だけを厳選して食べます。
この選択能力は、コーヒーの品質を測る科学的な指標であるBrix値(糖度)と深く関連しています。スペシャルティコーヒーの世界では、Brix値が18〜22度のチェリーが、風味のポテンシャルが最大化された完熟状態であるとされています。
野生のジャコウネコは、まさに自然界の糖度計として機能し、最も糖度が高く、栄養価に富んだチェリーだけを確実に選び出すのです。
第二のメカニズムは「消化」です。選び抜かれたコーヒーチェリーは、ジャコウネコの消化器官を約24時間から36時間かけて通過します。
この過程は、単なる消化ではなく、他に類を見ないユニークな「生化学的発酵」のプロセスなのです。
ジャコウネコの消化器官。天然の発酵。
コーヒー豆がジャコウネコの消化器官を通過する間に、劇的な生化学的変化が起こります。胃液や消化酵素がコーヒー豆の内部にまで浸透し、その成分を根本から変質させるのです。
タンパク質の変質
消化酵素は、豆の内部に含まれる長鎖の貯蔵タンパク質を、より短いペプチドやアミノ酸に分解します。焙煎後にコーヒーの苦味の主な原因となるのは、このタンパク質です。
この分解プロセスにより、苦味が劇的に減少し、非常に滑らかでクリーンな口当たりが生まれます。
脂肪と香気成分の増強
近年、『Scientific Reports』誌に掲載された研究により、さらに驚くべき事実が明らかになりました。ジャコウネコによって処理された豆は、総脂肪含有量が著しく高くなります。脂肪は揮発性の香気成分の媒体として機能するため、これが豊かなアロマと重厚な口当たり(マウスフィール)に貢献します。
特に、2種類の脂肪酸メチルエステル(FAMEs)、すなわちカプリル酸メチルエステルとカプリン酸メチルエステルの濃度が顕著に上昇します。これらの化合物は、クリーミーで乳製品のような風味特性と関連しており、コピ・ルアク特有の複雑で奥深い味わいを生み出す一因と考えられています。
このように、コピ・ルアクの卓越した風味は、ジャコウネコによる厳格な「原料選択」と、消化器官内での精密な「化学処理」という、二つの段階が完璧に連携することで初めて生まれるのです。どちらか一方でも欠ければ、その品質は決して達成されません。
ジャコウネコが好むコーヒー品種
岩下珈琲が扱うインドネシア・スマトラ島アチェ州タケンゴン地区では、野生のジャコウネコが特定のコーヒー品種に対して明確な好みを示すことが観察されています。
彼らは、SL29のような品種よりも、TIMTIM(ティムティム)という品種を好んで食べます。この選択が、最終的なコーヒーの味わいに決定的な影響を与えます。
SL28/SL29品種の分析
これらはケニアのスコット研究所で開発された、ブルボン系の純粋なアラビカ種です。
卓越したカップクオリティで世界的に知られ、その特徴はカシスやグレープフルーツを思わせる明るく複雑な柑橘系の酸味、シロップのような質感(ボディ)、そして甘くフルーティーな風味です。糖度が高くなりやすいポテンシャルを持っています。
TIMTIM(ティムティム)品種の分析
この品種は、ティモール島で自然に発生したアラビカ種とロブスタ種の交配種(ティモール・ハイブリッド)です。スマトラ島では「ティムティム」と呼ばれています。
その風味は、大地の香り(アーシー)、ハーブのようなニュアンス、しっかりとしたボディ、穏やかな酸味が特徴で、チョコレートや黒糖のような甘みも感じられます。ロブスタ種の遺伝子を受け継いでいるため、純粋なアラビカ種に比べてショ糖含有量が低いなどの化学的特徴も持ち合わせています。
果実を主食とするジャコウネコがTIMTIMを好む理由は、単に糖度が高いからだけではないと考えられます。TIMTIMのチェリーが持つ穏やかな酸味や、特有のタンパク質・脂質の構成が、ジャコウネコの味覚や消化により適している可能性があります。
この動物的な選択が、スマトラコーヒー特有のアーシーでリッチな風味の基盤となり、その後の消化プロセスを経て、他に類を見ない複雑な味わいへと昇華されるのです。ジャコウネコの「選択」が、最終的な一杯の個性を決定づけていると言えるでしょう。
岩下珈琲は、現地を訪問視察して本物のルワックコーヒーを仕入れています。
スマトラ島ガヨ高地のジャングルの奥地へ買い付けへ。
岩下珈琲が扱うコピ・ルアクの故郷は、インドネシア・スマトラ島北部、アチェ州に広がるガヨ高地のタケンゴン地区です。この地は、単なるコーヒーの産地ではありません。世界最高峰のアラビカコーヒーを生み出すための理想的な条件が揃った、特別な「テロワール」なのです。
標高1,100メートルから1,700メートルに達する高地、火山活動によって形成されたミネラル豊かな肥沃な土壌、そして昼夜の寒暖差が大きい独特の微気候。これら全ての要素が組み合わさることで、複雑で奥深い風味を持つコーヒーチェリーが育まれます。
そして何よりも重要なのは、このガヨ高地が、野生のアジアパームシベットにとって理想的な自然生息地であるという事実です。豊かな森とコーヒー農園が共存するこの環境は、真にオーセンティックな天然のコピ・ルアクが採取できる、世界でも数少ない貴重な場所の一つなのです。
岩下珈琲は、現地を訪問視察して本物のルワックコーヒーを仕入れています。
オーナー直接調達がもたらす信頼
岩下珈琲のコピ・ルアクを他の製品と決定的に分ける最大の要因、それはオーナー自らが定期的にタケンゴン地区の現地に赴き、直接コーヒー豆を買い付けています。
インドネシアでもジャングルの奥地にあるため、毎年買い付けに行けるわけではありません。
貴重なため、ルワックコーヒーは大変高価であり、在庫もごくわずかな期間にしかありません。しかし、真のルワックコーヒーをお届けするため、オーナー自ら現地買付という方法を選択しています。
ぜひ、その一杯に込められた奇跡の味に、伝説のコーヒーが持つ本来の味わいを体験してください。


つまり、ジャコウネココーヒーの伝説的な味わいは、科学的にも裏付けられています。